【特集】IT企業に学生に…地方大学ならではの課題をビジネスチャンスに!国際教養大学の交通事情をめぐる動き
秋田市の国際教養大学とJR秋田駅とを結ぶ無料の乗り合い自動車の運行が、今月、スタートしました。
地方の大学が抱える、厳しい交通事情。
その解決に乗り出したのは、東京のIT企業でした。
■地方大学が抱える課題…解決に向け運行スタート
秋田空港から車で10分、秋田市雄和にある、国際教養大学。
去年、開学20周年を迎えましたが、当初から課題となってきたのが、秋田市中心部からのアクセスです。
フランスからの留学生
「JR和田駅との間のバスは、とても大切。日本では、どこへ行くにも電車が便利だから。でも今は1日に2本しかバスがないから、とても不便」
「きょう東京から秋田駅に着いたのが午前7時だったけど、大学に着いたのが8時半だった。イオンモール秋田までバスで行って、乗り換える必要があったから。和田駅と大学との間のバスを増やしてもらうか、直接、秋田駅まで行くバス路線があればいいと思う」
大学敷地内から定期的に出るバスは、イオンモール秋田とJR和田駅に行く2つの路線しかなく、秋田駅へ行くには、和田駅から電車に乗り換えるのが一般的です。
しかし、運転手不足などを理由に、今月から、この和田線が1日1往復に減ってしまいました。
そこで今月7日から運行を始めたのが、乗り合い自動車、「ショーケース・エクスプレス」です。
この新たな車両を使うと、大学向かいの停留所から直接、秋田駅に行くことができ、利便性が大幅にアップします。
運営するのは、ITや広告事業などを手がける東京の企業・ショーケースです。
ショーケース 平野井順一 社長(秋田市出身)
「そもそも私、隣の秋田椿台カントリーのゴルフ場にも何回も行ったことがありまして、それでこの辺のある意味交通の不便さというのを知っておりまして、その中で学生さんたちが、バスがなくなったらどれだけ困るだろうというのは非常によく分かりますので、そこをなんとか解決してあげたいなという気持ちがありました」
■畑違いのIT企業がなぜ?完全無料化の仕組み
利用のための事前登録や予約、学生証を使った本人確認は、ショーケースが作ったシステム。
IT企業の強みを生かしました。
利用した学生
「今までバスとか乗り継いだりすると、どうしても結構かかっちゃって、1000円近くかかっちゃうこともあったのかなって思うんですけど、それが0円っていうことは、いやこれは革命だなみたいな、すごいなって思いました」
運賃は、無料。
その秘密が、車内に設置されているモニターです。
ショーケースが、県の内外からスポンサー企業を集めて、車内でその企業の広告映像を流します。
スポンサーからの収入で、運行にかかる費用をまかない、優秀な学生を採用したいスポンサー側は、学生に自社をPRできる仕組みです。
■学生と地域の橋渡しに 地元出身社長の思い
学生の利便性向上はもちろん、平野井社長には、もうひとつ、ねらいがありました。
平野井 社長
「地元のことを知っていただくということと、地元との交流というものを増やすことができましたら、秋田のことをより理解しまして、何かしら秋田に落とせるものというものが、学生さんとしてもあるのではないか。やっぱり秋田駅周辺が、そういう情報なりいろんなものがそろっているところだと思いますので、そこと国際教養大を結ぶと、いうような、その路線というのを考えたということになります」
県外出身が8割以上を占める国際教養大学の学生に、秋田のことをもっと知ってもらいたい。
ショーケースの取り組みは、車の運行にとどまりません。
「乾杯!」
「乾杯!」
ショーケースが学生を招いて振る舞ったのは、きりたんぽ鍋。
秋田名物を食べながらショーケースエクスプレスのドライバーなど地元の人と交流してもらおうと、無料の食事会を企画しました。
学生
「私は、去年1年間で、秋田駅に1回して行っていない」
地元出身ドライバー
「えっ!そうなんですか」
学生
「本当に1回しか行かなくて。もう不便すぎて嫌になって行かなかったので、これからたくさん使わせてもらいます」
今後の路線拡大を見越して、学生のニーズを聞き取る目的もあります。
平野井 社長
「こういうのがあったらいいなにつきましては、どんどん意見を頂いて、我々としては、それがちゃんと実現できるようにというのと、ニーズをしっかり確認しながら、我々の路線というのを今後増やしていきたいなと考えております」
ショーケースでは、今後、県庁や市役所、病院など、学生のニーズに沿った路線を増やすとともに、交流会などを通して学生と地域の橋渡しをしたいと考えています。
■学生自ら起業も!地方大学の課題をビジネスチャンスに
国際教養大学の交通事情については、このような動きもあります。
国際教養大学 3年 大矢玲菜さん
「課題先進県・秋田の地で、地域に根差したサービスを、学生の手で作っていく」
今月、記者会見を開いたのは、国際教養大学3年の大矢玲菜さんが代表を務める一般社団法人「ライドオン」です。
国際教養大学の学生28人が所属するライドオンは、スマートフォンのアプリを使って、車を持っている学生と相乗りしたい学生をマッチングするサービスの事業化を目指しています。
早ければ夏ごろにもスタートする予定です。
ライドオン 大矢 代表
「活動を進めていくことで、みなさんのニーズ、隠れていた悩みとか本音っていうところが出てきて、それがマッチングされるような形で、社会全体で助け合って続いていけるような秋田になったらいいなと心から思っています」
ショーケースとライドオンは、いずれも初めは国際教養大学の学生限定でサービスを開始し、ゆくゆくはほかの地方大学にも展開したい考えです。