【特集】県内の音楽家が年に一度の共演 多彩な音色を奏でる「大人のための芸術鑑賞教室」に密着
今月1日、秋田市のアトリオン音楽ホールで、県内の音楽家が共演する、年に一度の演奏会が開かれました。
その名も「大人のための芸術鑑賞教室」です。
誰もが一度は聴いたことがある音楽を、奏者も観客も一緒になって楽しむ特別な演奏会を取材しました。
■和楽器に洋楽器…年に一度の「音遊び」
本番前日、出演者全員が集まり、最後のリハーサルが行われていました。
ステージに立つのは、県内在住の音楽家たち。
海外で音楽を学んだ人など、その経歴は様々ですが、いずれも一流の奏者として、県の内外で活躍しています。
今年の演奏会のテーマは、音楽の楽しさを伝えること。
子どもから大人まで楽しめるよう、クラシックの名曲や、映画の主題歌など、耳なじみのある曲で構成します。
曲や楽器の解説を交える形のプログラムになっていて、まさに「芸術鑑賞教室」そのものです。
本番直前まで、互いの音に耳を傾けて、意見を出し合い、より良い音楽を追い求めます。
「全体的に、わーっと最初から豪華になっちゃうので、オルガンの歌うところにした方が効果的かなって、試してみたくて。いまやってみてるんだけど。アレンジャー的にどう?」
「うっすらあった方がいいと思いますね。結構複雑な和音なので。あってくれた方が厚みが。そこくらいは」
年に一度の共演。
奏者たちも心待ちにしていました。
琴 田中郷子さん
「もうとても楽しいです。和楽器と洋楽器なんですけれど、同じ弦だったり、音量も違う楽器なんですけれど、その中で音選び、音遊びができるのが本当に楽しくて、大変勉強になっています」
ピアノ 清水洋子さん
「それぞれに呼吸のタイミングが違ったりしてとても楽しくやらせていただいてます」
■音楽が大好き トランペット奏者の思い
今回の演奏会で唯一のトランペット奏者、扇田泰子さん。
プロとして、トランペット教室を開いたり、様々な演奏会に出演したりしています。
トランペット 扇田泰子さん
「奏でる音っていうのは、苦しい音とかそういう音は『頑張っています』じゃなくて、みんなが幸せになれるような音色っていうのが共有できたらな。演奏者の皆さんもそうですし、聴いていただいている皆さんにも、思っています」
扇田さんが初めてトランペットを手にしたのは、小学生の時でした。
プロになったいまでも、毎日、自宅で自分の音楽と向き合っています。
扇田泰子さん
「(練習時間は)その日によります。(8年前に)子どもを産んでからは、子どもに左右されるので、レッスンとかそんなに入っていないときは、ここにいられるときは、3時間くらいできたりするんですけど、でも頑張って1時間は毎日とるようにしています。」
扇田さんは、高校卒業後、プロを目指して単身、ヨーロッパに渡りました。
オーストリアのウィーンと並ぶ音楽の都・チェコのプラハで音楽大学に通いながら、オーケストラにも参加し、実力をつけました。
しかし、音楽活動のためにアルバイトに明け暮れるような日々が続き、30歳を迎えた2014年、それまで11年過ごしたチェコを離れ、日本に戻る決断をしました。
扇田泰子さん
「うまくいかないのは自分に理由があると思って、一度音楽から離れてみようと思いまして」
それでもやっぱり、音楽が大好き。
9年前、結婚を機に秋田に戻ると、またトランペットを吹きたいという強い思いが沸きあがりました。
扇田泰子さん
「楽器を毎朝持ち始めて練習して、(演奏した結果)音楽を成熟させて、みなさんの前で披露するっていうのが、自分の中のルーティーンで当たり前のように血に流れているという感覚が、いままではそれが当たり前だったので、なんとも思わなかったんですけど、なくなった瞬間に体の具合が、気持ちの具合が悪いみたいな感じになって。私は実は音楽のサイクルにずっと生かされていたんだなって」
これまでの人生で学んだ音楽の楽しさや素晴らしさを、今回のコンサートを通じて、多くの人と共有したいと扇田さんは考えています。
扇田泰子さん
「クラシック音楽だからこんなんだって敬遠されないで、こういうふうな聴き方があるんだと思って、身近に音楽を感じながら、一緒に手拍子をしながら聴いていただければ」
■「大人のための芸術鑑賞教室」 音楽の素晴らしさを伝える
迎えた本番。
一流の奏者が集う演奏会とあって、700席あるアトリオン音楽ホールは、ほぼ埋め尽くされました。
「最初に紹介する楽器は、こちらのチェンバロという楽器です。ヴィヴァルディやヘンデル、バッハが活躍していた古い時代には、いまのピアノのように、よく奏でられていた楽器なんです」
観客がステージに上がる場面も。
指揮者の体験コーナーです。
観客が一流の奏者の合奏をリードしました。
みんなで手拍子をしながら、歌詞を口ずさみながら、1時間にわたる芸術鑑賞教室を楽しみました。
観客
「指揮棒を持てるのが、初めてだったのが、持てるんだ、みたいな感じなのが、とっても残っています、心に」
「一流の方々の演奏を聴くというのは、やっぱりとても楽しいことだし、貴重な体験なので、各楽器の音の響き、音色というものをしっかり楽しませていただいて、そこですね、すごく楽しかったです」
この日は、扇田さんの家族も会場に駆けつけていました。
娘・ゆりえさん
「すごく上手でした」
泰子さん
「ありがと!」
夫・亮さん
「お母さんみたいにトランペット吹いてみる?」
ゆりえさん
「みたい...」
亮さん・泰子さん
「みたい?ふきたい?」
「ちゃんと言って!」
ゆりえさん
「みたいです」
扇田泰子さん
「満席を見るのはとてもうれしくて、お客さん皆さん、だんだんコンサートが進行していくにつれて笑顔になっていくのが見えて、すごくこっちも楽しませていただきましたし、元気をいただきました」
「改めて、お客様と音楽の時間を共有するっていう喜びを確かめられた時間だと思いますので、これからも続けていきたい」
音楽の楽しさや素晴らしさがぎっしり詰まった特別な演奏会。
訪れた人の胸に心躍る旋律を残して、今年の幕を閉じました。