倉庫内にクマが侵入した想定 安全確保からオリの設置まで 訓練で連携を確認 秋田・鹿角市
2019年に鹿角市十和田大湯の市街地にクマが出没した際、対応にあたった猟友会のハンターがクマに襲われ、けがをしたことを教訓に、鹿角市は、県内でいち早く、市街地の対処マニュアルを策定しました。
その後、県内では全国に先駆けて、自治体と警察、それに猟友会による市街地での対応訓練が各地で行われています。
23日は、近年、相次いで発生している建物内へのクマの侵入を想定した訓練が行われ、参加者が連携を確認しました。
23日、鹿角市で行われた、クマの市街地対応訓練。
去年、秋田市にあるスーパーの店内にクマが侵入して、長い間とどまったことを教訓に、見通しが悪い倉庫の中にクマが入り込んだ想定で行われました。
2020年に策定した対処マニュアルなどに沿って、本番と同様に、市と警察、それに地元の猟友会が連携して、クマの捕獲方法や道路の規制、周辺住民の安全確保などを現地対策本部で検討し、素早く実施に取り掛かります。
警察
「ここの交通規制を実施していますので、市の建物からも中に入れないようにしております」
市
「現状からいうと、会長(クマの)追い払いは考えられないですよね」
猟友会
「そうですね。これみんな(住宅)ありますので、追い払う場所がないです」
市
「そうすれば閉じ込めたままワナの設置という流れでよろしいですか?」
猟友会
「それが得策だと思いますね」
訓練の最終段階。
クマが潜んでいる車庫の出入り口に捕獲用のオリを設置します。
猟友会がオリを運んで、防具やヘルメットを着用した警察官は、クマが飛び出してきて危害を加えないよう支援する役割分担で設置を終えました。
訓練のあとには、県自然保護課の近藤麻実さんが専門家の観点から良かった点や改善点を指摘しました。
県 自然保護課 近藤麻実さん
「警察がドアを開けるときに、盾の人とスプレーの人に別れていました。それはすごく良かったと思います。さすがです」
「細かいことを言うと、こっち(ドアの開口が広い方)にいた方が良かったかなと思いました」
県内では、全国に先駆けて5年前から各地で市街地でのクマ対応訓練が行われています。
視察した国の研究機関・森林総合研究所の研究員は、秋田で行われている訓練を高く評価しました。
森林総合研究所 東北支所 大西尚樹さん
「県と市と警察と対策チーム(実施隊・猟友会)が非常によく連携が取れていて、心強いなという感じがしましたね。実際、鹿角・秋田全体を見ても、クマの出没が相次いでいますし、こういった日頃の訓練を組み合わせていくことで、住んでいる方たちの安心感につながるかなと思いました」
「クマと会話ができない。山に帰ってとか伝わればいいですが、そういうわけにはいかないので、クマたちが次にどういう行動をするか絶対分からないんですよね。我々専門家といわれる人たちがいろいろ考えて(対処)シナリオを提供して、研究の内容や成果を伝えておいて、その時に(現場で)ベストがとれるわけでない、必ずしも麻酔が使えないかもしれない、その中で、ベターと思われるものをくみ上げていって(対応する)」
県内では23日の鹿角市を皮切りに、各地で連携を確認する訓練が行われます。
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おととしのクマの大量出没で、県内で全国最多の70人がけがをしたことなどを受けて、国会では、法改正が議論されてきました。
今月18日には、市街地に現れたクマなどに対し、一定の条件を満たせば銃を使った猟をできるようにする、改正鳥獣保護管理法が可決、成立しています。
公布から6か月以内、クマの出没が増える秋までに施行される見通しです。