番組審議会リポート|
PROGRAM COUNCIL REPORT
第653回番組審議会が10月29日に秋田放送で開かれました。合評番組は「ABS news every+ 陽希は部活の夢を見る~相撲少年密着5か月~」でした。
委員からは
中学校に入ったばかりの陽希さんと、同じ年代の子供たちが相撲で切磋琢磨している姿がすがすがしかった。相撲の部活を作るために先生に相談したり自分でチラシを作ったり友達に声をかけたり、行動力のすごさに感心させられた。今、中学校の部活動は地域移行の動きが進められていて、学校に新規の部活を作ることは難しいと思うが、周りの大人たちが画一的に「無理だよ」と言ってしまうのではなく、陽希さんの思いを子供扱いしないで真剣に向き合っているのが印象的だった。
良いキャラクターを見つけたなと思った。陽希さんは言うこともやることも子供らしくてかわいくて、本当に応援したくなった。練習中の成長ぶりもうまく描かれていた。立ち合いの練習を重ねて前に踏み込めるようになっていることが、静止した映像を縦に並べるという工夫でわかりやすかった。また、子供のころからの写真がたくさん出てきて、それを見ているだけでも楽しかった。
個人的に相撲が大好きなので、この番組の放送はとても楽しみしていた。陽希くんは行動力があり、大人の話もしっかり聞いていて、弱冠13歳なのに相撲に対する熱意が素晴らしい。今回の番組は本当に元気になるいい番組だった。見た後にすがすがしさしか残らなかった。相撲ファンとしてはこれからもずっと陽希くんを追って行って欲しい。今後がとても楽しみ。
陽希くんは、子供っぽさと同時に、相撲については大人っぽい部分があって、それが良く出ていた。高校で相撲の部活を作ったことがある先輩から部員の勧誘について話を聞くとき、子供なら、どうやって誘ったらいいか、と聞きそうなものだが、言ってはいけないことを教えてください、というのは、とても大人な感覚だなぁと思った。また、小学生にアドバイスをするときは、まさしく先輩として接していて大人っぽかった。大人と子供の両面が表れていて、とても感心した。
「部活の夢を見る」というタイトルで部活を中心に描くことにしたのは何故か、ということを考えていた。これだけの才能を持つ彼であれば、プロの力士になりたい、いずれは横綱に、という夢もあるのでは、と。しかし、この後彼が成長していく様子を長期取材で追いかけていくことができるとすれば、中学生になったばかりで部活の設立に奮闘する姿を描くのは今しかないだろう。それは後々意味を持ってくるコンセプトなのではないか。これからが楽しみな番組だと感じた。
といった意見が上がりました。
第652回番組審議会が9月25日に秋田放送で開かれました。合評番組はテレビ報道番組「NNNドキュメント‘24 クマージェンシー ~ヒトとクマの距離感~」でした。
委員からは
番組を通して、改めて切迫した問題だと感じた。クマが市街地でうろついている映像や襲われた人の傷口の映像、インタビューなど、テレビならではの生々しさが印象的だった。今回、札幌テレビとの共同制作ということで、秋田と北海道で、被害が増えている理由に共通する部分があるのか、それぞれで特徴的な部分があるのか、もう少し踏み込んだところが知りたかった。
NNNドキュメントということで、この番組を全国の人に見てもらうことができて良かったと感じている。クマがかわいそう、といった苦情が行政などに寄せられることが問題になっているが、わかってもらうためには迫力のある怖い映像を見てもらう必要があったと思う。また、生々しい傷と体験談を放送させてくれた、被害者の方の気持ちがありがたかった。
クマに襲われないためにはラジオなどを鳴らして存在を知らせる、ということだったが、人間を襲ったことのあるクマは逆に寄ってくる、という話も聞いたことがある。クマと遭遇してしまったときに身を守るための最新のセオリーのようなものを番組の中で紹介してもらいたかった。
自分が以前住んでいた場所の近くにもクマが出たという報道があり、驚いていたが、番組に使用されていた定点カメラの映像で、わずか40分の間に人とクマが交互に歩いている実態を見て恐怖を感じた。クマは可愛いキャラクターになっているが、実際のクマは可愛いものなどではないのが良く分かった。短いけれどとてもインパクトの強い番組だったと思う。
クマと人間の境をはっきりさせよう、という主張が、取り上げられた人たちの発言や映像などからよくわかった。札幌市内の空撮では、人の住む場所とクマの住む場所が重なり合っていることが目で見てわかるように表現されていた。この番組によってクマ問題の論点が整理されたのではないか。今後は解決策を提言する、という方向で続編を作っていってもらいたい。
クマの駆除にあたっている人の「命を奪うことから目をそむけない。それが自分の責任だ」」という非常に重い発言が番組を引き締めていた。クマに責任はない、しかし放っておくこともできない、ヒトとクマ、どちらか一方の側に立つのではなく、中立の立場から見ようという姿勢が感じられ、作り手はもっと奥深い問題を見ようとしているのだ、ということが番組全体として表現されていた。
といった意見が上がりました。
第651回番組審議会が7月30日に秋田放送で開かれました。合評番組はテレビ報道番組「守る、いのちと暮らし~秋田 大雨から1年~」でした。
委員からは
水害によって地域の景色が明らかに変わっていった様子がわかりやすく伝わってきた。高齢の女性が「そのまま流れていけばいいかとも思ったけれど、そうもいかないから頑張って生きてきた。」という一言がものすごく切実に感じた。全体として被災した人たちと地域の1年間が丁寧に描かれていて、複数の記者が心を込めて向き合ってきたことが伝わってきた。
人間の力強さを感じさせてくれる番組だと感じた。魅力的な取材対象が多く、その方たちがどう立ち上がって行くかが楽しみだ。彫刻に取り組む男性が被災後に彫っていた仏像が、優しい素晴らしい表情で、象徴的な映像だった。また、田んぼが浸水してしまった人、高額な医療機器を浸水で失いながら、また病院を始めたいと語る医師など、その後どうなっていくのかが気になる人たちが多く、その後が知りたい思った番組だった。
今回の大雨を見ても、自然災害は常態化しているように感じる。このことは、頭ではわかっていてもなかなか具体的には対応できていないもので、こう言う番組が定期的に放送されることで我々の防災意識を深めていく、忘れさせないという意味があるのだと感じた。
秋田市楢山地区では1年たって被害から立ち直っている人と、被害の影響を引きずっている人に極化しているとのことだったが、その理由は何だろう、と思った。自分が東日本大震災で被災した時の経験では、今まで住んでいたところに見切りをつけて新しい生活を始めた人の方が立ち直りが早かった。性格的なものなのか、金銭的なものなのか、その理由が知りたいと感じた。
高額な医療機器を失ってしまった秋田市のクリニックや、田んぼに泥水が入ってしまった五城目町の農業法人などに対して、行政からの支援はあったのだろうか。もしも無い、あるいは不十分だとすればそれはもっとあるべきだ、と提言して欲しいし、あるのならばそれを事実として伝えて欲しい、と感じた。
使えなくなった家財道具を整理していた人が言っていた、「ゴミじゃない」という一言は本当に重かった。生活そのもの、人生そのものをゴミとして処理しなければいけない大変さというのが、災害の恐ろしさであり、その実相を伝えていた、と感じた。
といった意見が上がりました。