番組審議会リポート|
PROGRAM COUNCIL REPORT
第654回番組審議会が11月19日に秋田放送で開かれました。合評番組は「NNNドキュメント’24 いかさま手品師の夢 ~夫婦、1000日の奮闘記~」でした。
委員からは
番組の中で語られた「コロナ禍でマジックを見てもらう場が失われたことが悲しい、悔しい」であるとか、病気になって気弱になり「需要が無くなっていくならフェードアウトすればいい」といった、本心から出た言葉が表情と共に伝えられているのは、密着取材の成果だと思う。少し気になったのは、場面の切り替わりで最新の話なのか古い話なのか、分かりにくいと感じた。
一つ一つのエピソードに感激したり応援したりしながら見ていた。病気でもコロナ禍でも、日々やっていることが少しでもできることの幸せ、というものが見ている人に伝わったと思う。同じように闘病している人へのエールにもなるのではないか。ただ、タイトルにあった「夢」というものが、人生は夢のようにはかない、という意味に思えてしまって、少し寂しい気持ちになった。
昔、会社の忘年会に来てもらったことがあり、恰幅の良かった人がしぼんでしまった姿を見ると、人生いろいろなことがあるんだなぁと感じた。ステージ上のパートナーのみならず、人生のパートナーという奥様のスタンスが非常によく描かれていて、目頭が熱くなることがあった。大きなドラマがあるわけではないが、番組全体が自然体で淡々と描かれていることに共感を覚えた。
番組を見ていて、女性って強いなぁ、と思わずにはいられなかった。奥さんが言っていた、「立てなくなっても手が動くのであれば車椅子で、手が動かないなら私が代わりになってでもマジックをやりたい」という言葉から、中谷さんを思う気持ちが痛いほど伝わってきた。この番組は、夫婦の絆、家族の在り方を描いたものだと思う。
この番組の主人公は奥さんだったのではないか、と思いながら見ていた。番組では弱気になった人がもう一度夢に向かって頑張ってみようと思うようになる様子が描かれていたが、その主人公はまさしく奥さんで、「病気でやめるのはいいけれど、弱気でやめるのはいやだ」という言葉に、女性の強さを感じた。
奥さんの強さは、愛情だったのではないか。弱気になったこの人がこのままやめてしまったら、この人が不幸になる、そうさせないために強くあろうとしていた。とても魅力的な二人だと思う。この番組は前向きに頑張っているという人たちを単純に描くのではなく、病気などで深刻な事態を抱えながらも頑張っていこう、という2つの方向性が共存している。そのことが深みというか、立体的な奥行を番組に与えていた。
といった意見が上がりました。
第653回番組審議会が10月29日に秋田放送で開かれました。合評番組は「ABS news every+ 陽希は部活の夢を見る~相撲少年密着5か月~」でした。
委員からは
中学校に入ったばかりの陽希さんと、同じ年代の子供たちが相撲で切磋琢磨している姿がすがすがしかった。相撲の部活を作るために先生に相談したり自分でチラシを作ったり友達に声をかけたり、行動力のすごさに感心させられた。今、中学校の部活動は地域移行の動きが進められていて、学校に新規の部活を作ることは難しいと思うが、周りの大人たちが画一的に「無理だよ」と言ってしまうのではなく、陽希さんの思いを子供扱いしないで真剣に向き合っているのが印象的だった。
良いキャラクターを見つけたなと思った。陽希さんは言うこともやることも子供らしくてかわいくて、本当に応援したくなった。練習中の成長ぶりもうまく描かれていた。立ち合いの練習を重ねて前に踏み込めるようになっていることが、静止した映像を縦に並べるという工夫でわかりやすかった。また、子供のころからの写真がたくさん出てきて、それを見ているだけでも楽しかった。
個人的に相撲が大好きなので、この番組の放送はとても楽しみしていた。陽希くんは行動力があり、大人の話もしっかり聞いていて、弱冠13歳なのに相撲に対する熱意が素晴らしい。今回の番組は本当に元気になるいい番組だった。見た後にすがすがしさしか残らなかった。相撲ファンとしてはこれからもずっと陽希くんを追って行って欲しい。今後がとても楽しみ。
陽希くんは、子供っぽさと同時に、相撲については大人っぽい部分があって、それが良く出ていた。高校で相撲の部活を作ったことがある先輩から部員の勧誘について話を聞くとき、子供なら、どうやって誘ったらいいか、と聞きそうなものだが、言ってはいけないことを教えてください、というのは、とても大人な感覚だなぁと思った。また、小学生にアドバイスをするときは、まさしく先輩として接していて大人っぽかった。大人と子供の両面が表れていて、とても感心した。
「部活の夢を見る」というタイトルで部活を中心に描くことにしたのは何故か、ということを考えていた。これだけの才能を持つ彼であれば、プロの力士になりたい、いずれは横綱に、という夢もあるのでは、と。しかし、この後彼が成長していく様子を長期取材で追いかけていくことができるとすれば、中学生になったばかりで部活の設立に奮闘する姿を描くのは今しかないだろう。それは後々意味を持ってくるコンセプトなのではないか。これからが楽しみな番組だと感じた。
といった意見が上がりました。
第652回番組審議会が9月25日に秋田放送で開かれました。合評番組はテレビ報道番組「NNNドキュメント‘24 クマージェンシー ~ヒトとクマの距離感~」でした。
委員からは
番組を通して、改めて切迫した問題だと感じた。クマが市街地でうろついている映像や襲われた人の傷口の映像、インタビューなど、テレビならではの生々しさが印象的だった。今回、札幌テレビとの共同制作ということで、秋田と北海道で、被害が増えている理由に共通する部分があるのか、それぞれで特徴的な部分があるのか、もう少し踏み込んだところが知りたかった。
NNNドキュメントということで、この番組を全国の人に見てもらうことができて良かったと感じている。クマがかわいそう、といった苦情が行政などに寄せられることが問題になっているが、わかってもらうためには迫力のある怖い映像を見てもらう必要があったと思う。また、生々しい傷と体験談を放送させてくれた、被害者の方の気持ちがありがたかった。
クマに襲われないためにはラジオなどを鳴らして存在を知らせる、ということだったが、人間を襲ったことのあるクマは逆に寄ってくる、という話も聞いたことがある。クマと遭遇してしまったときに身を守るための最新のセオリーのようなものを番組の中で紹介してもらいたかった。
自分が以前住んでいた場所の近くにもクマが出たという報道があり、驚いていたが、番組に使用されていた定点カメラの映像で、わずか40分の間に人とクマが交互に歩いている実態を見て恐怖を感じた。クマは可愛いキャラクターになっているが、実際のクマは可愛いものなどではないのが良く分かった。短いけれどとてもインパクトの強い番組だったと思う。
クマと人間の境をはっきりさせよう、という主張が、取り上げられた人たちの発言や映像などからよくわかった。札幌市内の空撮では、人の住む場所とクマの住む場所が重なり合っていることが目で見てわかるように表現されていた。この番組によってクマ問題の論点が整理されたのではないか。今後は解決策を提言する、という方向で続編を作っていってもらいたい。
クマの駆除にあたっている人の「命を奪うことから目をそむけない。それが自分の責任だ」」という非常に重い発言が番組を引き締めていた。クマに責任はない、しかし放っておくこともできない、ヒトとクマ、どちらか一方の側に立つのではなく、中立の立場から見ようという姿勢が感じられ、作り手はもっと奥深い問題を見ようとしているのだ、ということが番組全体として表現されていた。
といった意見が上がりました。